クンマーの定理(Kummer's theorem)は、数学における整数論の分野に属する定理の一つである。この定理は、フェルマーの最後の定理に関する証明において、重要な役割を果たした。

以下では、クンマーの定理について詳しく解説する。

【定理の内容】

クンマーの定理とは、以下のようなものである。

ppを素数とし、nnを非負整数とする。また、以下の条件を満たすような整数a0,a1,,ana_0,a_1,\dots,a_nを考える。

0ai<p(0in)0\leq a_i < p\quad (0\leq i \leq n)

このとき、ppa0+a1p+a2p2++anpna_0+a_1p+a_2p^2+\cdots +a_np^nを割り切る場合、pαp^{\alpha}a0+a1p+a2p2++anpna_0+a_1p+a_2p^2+\cdots +a_np^nを割り切る場合のα\alphaの最大値をkkとすると、以下が成り立つ。

(k0)+(k1)(p1)+(k2)(p1)2++(kk)(p1)k=a0+a1p+a2p2++anpnpk{k \choose 0}+{k \choose 1}(p-1)+{k \choose 2}(p-1)^2+\cdots +{k \choose k}(p-1)^k=\frac{a_0+a_1p+a_2p^2+\cdots +a_np^n}{p^k}

この式は、パスカルの三角形のkk行目における各項をp1p-1で置き換えたものである。

【証明の概要】

クンマーの定理の証明には、二項定理やフェルマーの小定理といった基本的な結果が用いられる。以下では、その概要について解説する。

まず、ppa0+a1p++anpna_0+a_1p+\cdots +a_np^nを割り切る場合について考える。このとき、以下が成り立つ。

a0+a1p++anpn0(modp)a_0+a_1p+\cdots +a_np^n\equiv 0 \pmod{p}

したがって、a0a_0以外の各項はppで割り切れる。つまり、0in0 \leq i \leq nかつi0i\neq 0に対しては、aipia_ip^ipi+1p^{i+1}で割り切れる。よって、以下が成り立つ。

a0+a1p++anpna0(modpk+1)a_0+a_1p +\cdots +a_np^n\equiv a_0 \pmod{p^{k+1}}

また、ppa0+a1p++anpna_0+a_1p+\cdots +a_np^nを割り切らない場合について考えると、以下が成り立つ。

a0+a1p++anpna0(modpk)a_0+a_1p+\cdots +a_np^n\equiv a_0 \pmod{p^k}

以上の式を用いて、左辺の二項式を展開すると、以下が得られる。

(a0+a1p++anpn)k=a0k+ka0k1(a1p+a2p2++anpn)+(higher terms)(a_0+a_1p+\cdots+a_np^n)^k = a_0^k+ka_0^{k-1}(a_1p+a_2p^2+\cdots +a_np^n)+(\text{higher terms})

ここで、ppa0+a1p++anpna_0+a_1p+\cdots +a_np^nを割り切る場合については、a1p+a2p2++anpna_1p+a_2p^2+\cdots +a_np^nppで割り切れるため、ka0k1(a1p+a2p2++anpn)ka_0^{k-1}(a_1p+a_2p^2+\cdots +a_np^n)pk+1p^{k+1}で割り切れる。また、ppa0+a1p++anpna_0+a_1p+\cdots +a_np^nを割り切らない場合については、a1p+a2p2++anpna_1p+a_2p^2+\cdots +a_np^npkp^kで割り切れるため、ka0k1(a1p+a2p2++anpn)ka_0^{k-1}(a_1p+a_2p^2+\cdots +a_np^n)pkp^kで割り切れる。

よって、以下が成り立つ。

(a0+a1p++anpn)ka0k+kpa0k1(a1p+a2p2++anpn)(modpk+1)(a_0+a_1p+\cdots+a_np^n)^k \equiv a_0^k+kpa_0^{k-1}(a_1p+a_2p^2+\cdots +a_np^n) \pmod{p^{k+1}}

あとは、二項係数の計算を行い、左辺と右辺を比較することで、クンマーの定理が証明される。詳細は省略するが、この部分の証明には二項定理やフェルマーの小定理が用いられる。

【応用例】

クンマーの定理は、フェルマーの最後の定理において、n=p1n=p-1の場合に特に重要な役割を果たした。この場合、クンマーの定理が以下の形になる。

(p10)+(p11)++(p1p1)=(p1)!p{p-1 \choose 0}+{p-1 \choose 1}+\cdots +{p-1 \choose p-1}=\frac{(p-1)!}{p}

この式の左辺は、二項式展開によって(1+1)p1(1+1)^{p-1}と書くことができる。また、右辺はppで割り切れることから、以下が成り立つ。

2p11(modp)2^{p-1}\equiv 1 \pmod{p}

この式を用いることで、フェルマーの最後の定理のn=p1n=p-1の場合が証明される。

リンク

Kummer theory[EN]