部分分数分解を用いた積分

部分分数分解は、有理式を分子の次数が分母の次数より大きい場合に、分母を簡単な因数の積に分解することを目的とする手法である。この手法を用いることにより、有理式の積分を簡単に行うことができる。

有理式の分母が2次以上の重根を持たない場合、部分分数分解は以下のように行うことができる。

①分母を素因数分解する。

②分母の因数毎に、以下のように部分分数分解する。

分母が (ax+b)n(ax + b)^n の形をしている場合、部分分数分解をすると、

A1ax+b+A2(ax+b)2++An(ax+b)n\frac{A_1}{ax+b}+\frac{A_2}{(ax+b)^2}+\cdots+\frac{A_n}{(ax+b)^n}

となる。ただし、A1,A2,,AnA_1, A_2, \ldots, A_n は未知定数である。

分母が (ax2+bx+c)n(ax^2+bx+c)^n の形をしている場合、部分分数分解をすると、

B1x+C1ax2+bx+c+B2x+C2(ax2+bx+c)2++Bnx+Cn(ax2+bx+c)n\frac{B_1x+C_1}{ax^2+bx+c}+\frac{B_2x+C_2}{(ax^2+bx+c)^2}+\cdots+\frac{B_nx+C_n}{(ax^2+bx+c)^n}

となる。ただし、B1,B2,,Bn,C1,C2,,CnB_1, B_2, \ldots, B_n, C_1, C_2, \ldots, C_n は未知定数である。

部分分数分解を行った後、式を展開して積分することで、元の有理式の積分が求められる。

例えば、以下のような有理式の積分を考える。

x+1x2+2x+1dx\int \frac{x+1}{x^2+2x+1} dx

分母を因数分解すると、x2+2x+1=(x+1)2x^2+2x+1=(x+1)^2 となるので、部分分数分解をすると、

x+1x2+2x+1=Ax+1+B(x+1)2\frac{x+1}{x^2+2x+1}=\frac{A}{x+1}+\frac{B}{(x+1)^2}

となる。A,BA, B は未知定数である。これを式に代入して整理すると、

A+B=1B=AA+B=1 \\ B=-A

となるので、A=12,B=12A=\frac{1}{2}, B=-\frac{1}{2} である。よって、元の積分は以下のようになる。

x+1x2+2x+1dx=(121x+1121(x+1)2)dx=12lnx+1+12(x+1)+C\int \frac{x+1}{x^2+2x+1} dx=\int \left(\frac{1}{2}\cdot\frac{1}{x+1}-\frac{1}{2}\cdot\frac{1}{(x+1)^2}\right) dx=\frac{1}{2}\ln|x+1|+\frac{1}{2(x+1)}+C

ここで、CC は積分定数である。

部分分数分解を用いることで、有理式の積分を簡単に行うことができる。ただし、部分分数分解ができる条件を満たしていることが前提となるため、注意が必要である。

リンク

Integration using Partial Fractions[EN]