多変数微積分とは、複数の変数についての微積分のことを指します。1変数微積分では、変数が1つだけの関数の微積分を扱ってきましたが、多変数微積分では、変数が2つ以上の関数の微積分を扱います。

具体的には、多変数関数の微分・偏微分、多重積分、ベクトル場の線積分や面積分などを扱います。

まず、多変数関数の微分・偏微分について説明します。2変数関数f(x,y)f(x,y)の微分は、以下のように定義されます。

fx(x,y)=limh0f(x+h,y)f(x,y)hfy(x,y)=limh0f(x,y+h)f(x,y)h\frac{\partial f}{\partial x}(x,y) = \lim_{h\to 0} \frac{f(x+h,y)-f(x,y)}{h} \\ \frac{\partial f}{\partial y}(x,y) = \lim_{h\to 0} \frac{f(x,y+h)-f(x,y)}{h}

これは、xxyyについて微小な変化を加えたとき、ffがどれだけ変化するかを表しています。また、偏微分を表す記号として、\partialを用いて以下のように書くことがあります。

fxfy\frac{\partial f}{\partial x} \quad \frac{\partial f}{\partial y}

次に、多重積分について説明します。2変数関数f(x,y)f(x,y)について、領域DD上での積分を考えます。このとき、DDを小さな領域に分割し、各領域でffを近似します。そして、それぞれの領域の面積をかけたものを足し合わせることで、領域DD上でのf(x,y)f(x,y)の積分を求めます。

Df(x,y)dxdy=limΔx,Δy0i,jf(xi,yj)ΔxΔy\int_D f(x,y) dxdy = \lim_{\Delta x, \Delta y \to 0} \sum_{i,j} f(x_i,y_j) \Delta x \Delta y

この積分は、DDが単純な形状の場合には解析的に求めることができます。例えば、長方形領域D={(x,y)axb,cyd}D=\{(x,y)|a\leq x\leq b, c\leq y \leq d\}上でのf(x,y)f(x,y)の積分は、以下のようになります。

Df(x,y)dxdy=abcdf(x,y)dydx\int_D f(x,y) dxdy = \int_a^b \int_c^d f(x,y) dydx

最後に、ベクトル場の線積分や面積分について説明します。ベクトル場とは、各点においてベクトルが定まる場を指します。例えば、風の速度場や電場などがベクトル場になります。

ベクトル場F(x,y)F(x,y)について、曲線CC上での線積分を考えます。このとき、曲線CCを微小な線要素に分割し、各線要素でFFとの内積を計算し、それらを足し合わせることで、CC上でのF(x,y)F(x,y)の線積分を求めます。

CF(x,y)ds=limΔs0iF(xi,yi)Δs\int_C F(x,y) \cdot ds = \lim_{\Delta s \to 0} \sum_i F(x_i,y_i) \cdot \Delta s

また、ベクトル場F(x,y)F(x,y)について、曲面SS上での面積分を考えます。このとき、曲面SSを微小な面積要素に分割し、各面積要素でFFとの内積を計算し、それらを足し合わせることで、SS上でのF(x,y)F(x,y)の面積分を求めます。

SF(x,y)dS=limΔS0iF(xi,yi)ΔS\iint_S F(x,y) \cdot dS = \lim_{\Delta S \to 0} \sum_i F(x_i,y_i) \cdot \Delta S

以上が、多変数微積分の基礎的な内容になります。これらの知識を用いることで、物理学や工学などの現象を数学的にモデル化し、解析することができます。

リンク

Multivariable calculus[EN]