ベイズの定理

ベイズの定理(Bayes' theorem)とは、確率論において、ある事象が起こった時に、その原因となる可能性のある各要素(原因)がどの程度の確率で起きるかを求めるための公式である。ベイズの定理は、ベイズ統計学の基礎的な考え方であり、確率論の中でも特に重要な定理である。

ベイズの定理の式

ベイズの定理は以下の式で表される。

P(AB)=P(BA)P(A)P(B)P(A|B) = \frac{P(B|A)P(A)}{P(B)}

ここで、P(AB)P(A|B)は、事象BBが観測された時に、原因AAが起こる確率である。P(BA)P(B|A)は、原因AAが起こった時に、事象BBが観測される確率である。P(A)P(A)は、原因AAが起こる確率であり、これは事前確率(prior probability)と呼ばれる。P(B)P(B)は、事象BBが観測される確率であり、これは尤度(likelihood)と呼ばれる。

ベイズの定理の例

例えば、ある病気にかかる確率が1%であるとする。また、その病気にかかった人の中で、検査で陽性と診断される確率が90%、かからなかった人の中で、陰性と診断される確率が99%であるとする。このとき、検査で陽性と診断された人が、実際にその病気にかかっている確率を求めることができる。

この問題をベイズの定理を用いて解くと、以下のようになる。

  • AA: その人が病気にかかっている
  • BB: 検査で陽性と診断される

まず、事前確率P(A)P(A)は1%である。つまり、人口のうち1%がその病気にかかっているとする。

次に、尤度P(BA)P(B|A)は90%である。つまり、病気にかかった人の中で、検査で陽性と診断される確率が90%であるとする。

しかし、このままだと求めたい確率P(AB)P(A|B)を計算することができない。そこで、事象BBが起こったという条件のもとでの、原因AAが起こる確率P(AB)P(A|B)を求めるためには、事象BBが起こらなかった場合の確率P(¬B)P(\neg B)が必要になる。

P(¬B)P(\neg B)は、以下のように計算することができる。

P(¬B)=P(¬BA)P(A)+P(¬B¬A)P(¬A)P(\neg B) = P(\neg B|A)P(A) + P(\neg B|\neg A)P(\neg A)

ここで、P(¬BA)P(\neg B|A)は、病気にかかった人の中で、検査で陰性と診断される確率であり、P(¬B¬A)P(\neg B|\neg A)は、病気にかからなかった人の中で、検査で陰性と診断される確率である。また、P(¬A)P(\neg A)は、原因AAが起こらない確率であり、1P(A)1-P(A)である。

ここで、P(¬BA)P(\neg B|A)は10%であり、P(¬B¬A)P(\neg B|\neg A)は99%であるので、P(¬B)P(\neg B)は以下のように計算することができる。

P(¬B)=0.1×0.01+0.99×0.99=0.1089P(\neg B) = 0.1 \times 0.01 + 0.99 \times 0.99 = 0.1089

これを用いて、P(AB)P(A|B)を計算することができる。

P(AB)=P(BA)P(A)P(B)=0.9×0.010.1089=0.0825P(A|B) = \frac{P(B|A)P(A)}{P(B)} = \frac{0.9 \times 0.01}{0.1089} = 0.0825

つまり、検査で陽性と診断された人のうち、実際にその病気にかかっている人の割合は約8.25%であることがわかる。

まとめ

ベイズの定理は、原因と結果の関係を考える上で非常に重要な概念である。事前確率、尤度、事後確率の概念を理解し、適切な条件下でベイズの定理を用いることで、様々な問題を解決することができる。

リンク

Bayes' theorem[EN]