ベクトル

ベクトル(英: vector)は、大きさと向きを持つ量を表すための数学的な概念である。物理学、数学、工学などの分野で広く使われており、様々な現象や操作を表現するために重要な役割を担っている。

基本的な概念

ベクトルは、大きさと向きという2つの要素から構成される。数学的には、ベクトルは矢印で表され、矢印の先端が向く方向が向きを表し、矢印の長さが大きさを表す。以下に、ベクトルの表記方法を示す。

a=(a1a2an)\boldsymbol{a} = \begin{pmatrix} a_1 \\ a_2 \\ \vdots \\ a_n \end{pmatrix}

ここで、a\boldsymbol{a}はベクトルを表す変数であり、a1a_1からana_nはそれぞれの成分を表す。成分の数をベクトルの次元と呼び、上記の例ではnn次元のベクトルとなる。

ベクトルの演算

ベクトルに対しては、以下のような演算が定義されている。

ベクトルの加法

2つのベクトルa\boldsymbol{a}b\boldsymbol{b}があるとき、それらを加算した結果は以下のようになる。

a+b=(a1a2an)+(b1b2bn)=(a1+b1a2+b2an+bn)\boldsymbol{a} + \boldsymbol{b} = \begin{pmatrix} a_1 \\ a_2 \\ \vdots \\ a_n \end{pmatrix} + \begin{pmatrix} b_1 \\ b_2 \\ \vdots \\ b_n \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} a_1+b_1 \\ a_2+b_2 \\ \vdots \\ a_n+b_n \end{pmatrix}

ベクトルの定数倍

ベクトルa\boldsymbol{a}とスカラーccがあるとき、それらを定数倍した結果は以下のようになる。

ca=c(a1a2an)=(ca1ca2can)c\boldsymbol{a} = c\begin{pmatrix} a_1 \\ a_2 \\ \vdots \\ a_n \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} ca_1 \\ ca_2 \\ \vdots \\ ca_n \end{pmatrix}

ベクトルの内積

2つのnn次元ベクトルa\boldsymbol{a}b\boldsymbol{b}があるとき、それらの内積は以下のように定義される。

ab=a1b1+a2b2++anbn\boldsymbol{a} \cdot \boldsymbol{b} = a_1b_1 + a_2b_2 + \cdots + a_nb_n

内積は、2つのベクトルの向きがどの程度似通っているかを表す指標として用いられる。2つのベクトルが直行する場合、内積は0になる。

ベクトルの外積

2つの3次元ベクトルa\boldsymbol{a}b\boldsymbol{b}があるとき、それらの外積は以下のように定義される。

a×b=(a2b3a3b2a3b1a1b3a1b2a2b1)\boldsymbol{a} \times \boldsymbol{b} = \begin{pmatrix} a_2b_3 - a_3b_2 \\ a_3b_1 - a_1b_3 \\ a_1b_2 - a_2b_1 \end{pmatrix}

外積は、2つのベクトルが張る平行四辺形の面積や、3次元空間内で法線ベクトルを求める際に用いられる。

応用例

ベクトルは、物理学や工学などの分野で様々な現象や操作を表現するために用いられる。以下に、代表的な応用例を挙げる。

位置ベクトル

平面内や3次元空間における点の位置を表すために、位置ベクトルという概念が用いられる。位置ベクトルは、原点から点までのベクトルとして表現される。

速度ベクトル

物体の速度を表すために、速度ベクトルという概念が用いられる。速度ベクトルは、物体が移動する距離と時間の比率で求められる。

加速度ベクトル

物体の運動に関する法則を表すために、加速度ベクトルという概念が用いられる。加速度ベクトルは、物体の速度が単位時間あたりどの程度変化したかを表す。

まとめ

ベクトルは、大きさと向きという2つの要素から構成される量であり、様々な分野で重要な役割を担っている。ベクトルに対しては、加法や定数倍、内積、外積といった演算が定義されており、それらを用いて様々な現象や操作を表現することができる。

リンク

Vektor[EN]