Python実行環境の構築(Windows)
概要
このコースでは、Python実行環境を構築する手順を説明します。
この記事を読むことで、以下のことができます。
- WindowsにAnaconda(Python実行環境)をインストールする。
- 仮想環境を作成する。
- JupyterLabのショートカットを作成する。
動作環境
本記事の執筆のため以下の環境で実行・導入していますが、異なる環境でも基本的には同じ手順で最新の安定板を導入できます。
Microsoft Windows11 Pro
x64-ベースPC
Anaconda3 2023-03.1(64-bit)
Python 3.10.11
32bit版のPCにインストールする場合は、32bit版Anacondaを使用してください。
3つのインストール方法
Pythonをインストールする場合、主に以下の3つの方法があります。
- Python公式サイト external_linkからインストール
もっとも簡単な導入方法ですが、仮想環境を構築するためには、venvなどを別途インストールする必要があります。 - Anacondaのインストール(推奨)
Pythonでよく使用するJupyter LabやNumpy,Pandas等のライブラリが同時にインストールされます。また、仮想環境を構築・管理する機能を持っています。ただし、普段使用しないようなライブラリも多くインストールされるため、実行環境だけで5GB程度必要となり(仮想環境も構築する場合はさらに数GB必要です。)、ストレージ容量が少ない環境での実行では他の方法を用いることを検討したほうがよいです。また、従業員200名以上の大規模な商用利用では、無償版を使用すると利用規約に接触する点も注意が必要です。 - Minicondaのインストール
Anacondaの軽量版で、最低限のライブラリのみがインストールされます。Jupyter LabやNumpy,Pandas等の必須級のライブラリが入っていないため別途手動でインストールする必要がありますが、仮想環境内に必要なライブラリのみインストールすることでroot環境の容量を抑えたい場合はこちらを使用するとよいです。サイト external_linkからダウンロードしてAnacondaと同じ手順でインストールを進めてください。
仮想環境を構築する必要がない場合は1を、仮想環境は構築したいが軽量にしたい場合は3を使うとよいですが、
このサイトから導入を検討する方は科学系ライブラリに興味があるでしょうから、今回はその用途で一般的な2の方法での導入方法を説明します。
仮想環境の必要性
仮想環境を作成することで、複数の異なるバージョンやライブラリの実行環境を切り替えて実行することができます。科学系ライブラリは頻繁にバージョンアップが行われたり、ライブラリ同士の依存関係が複雑な構成になっていたりするケースが多いため、ライブラリのアップデートによって以前まで動いていたコードが急に動かなくなるようなケースが発生するリスクがあります。最悪の場合、環境が壊れてしまいほとんどの機能を実行できずに修正もできなくなる場合まであり、仮想環境を構築していない場合にこうなると全てアンインストールし直して構築し直す必要があります。仮想環境を構築している場合は簡単に環境のコピーや削除ができるため、リスクを軽減できます。
一方で、仮想環境を作成する場合には、自身がどの環境を用いてPythonを実行しているか、常に意識する必要があります。Jupyter Labを実行する場合やプログラムを定期実行する場合など、環境変数を正しく設定する必要があります。
インストール手順
- Anacondaの公式サイト external_linkにアクセス
- Downloadボタンを選択(ダウンロードが始まります)
アクセスした際のOSに合わせたリンクが表示されますが、下に画面をスクロールすることで自身でインストーラーを選択することもできます。(上記の画面はサイトリニューアルでデザインが変更される可能性があるため、下の画面も一応載せておきます。)
- ダウンロードしたインストーラー(Anaconda3-【バージョン名】-Windows-x86_64.exe)を実行します。
- インストーラーの流れに沿ってインストールを実行します。
- 「Next」を選択してセットアップを開始します。
- 利用規約に同意します。
- 同一PC上で、複数ユーザー共同で使いたい場合はAll Usersを選択します。選択にはシステム管理者権限が必要です。自分のみが使用する場合やユーザーごとに個別にインストールする場合は、JustMeを選択します。こちらの選択時には管理者権限は不要です。
- Anacondaインストール先を設定できます。特別な理由が無ければデフォルトのままを推奨します。
- オプションを変更できますが、デフォルトのままで問題ありません。「インストール」を実行します(数分~数十分かかります)。
- インストール完了後、Nextを選択します。
チェックを入れているとチュートリアル等を含むブラウザが立ち上がります。中身については今回解説しないので、不要であればチェックを外すか、ブラウザを終了して問題ありません。
- 「Next」を選択してセットアップを開始します。
これでAnacondaのインストールが完了しました。
初期設定と仮想環境の構築
仮想環境を作成する方法として、Anaconda Navigatorを使用する方法と、Anaconda Promptからコマンドを打つ方法の2種類があります。
Anaconda NavigatorはGUI操作により簡単に作業を行えますが、実行環境によってはかなり動作が重いことと、Jupyterの設定等でコマンドを打つ機会は多いため、ここではAnaconda Promptを利用する方法を説明します。
- Windowsタスクバーの検索窓で「Anaconda」と検索して、「Anaconda Prompt」または「Anaconda Powershell Prompt」を起動します。
- 以下のコマンドを入力して、ライブラリを最新の状態にします。
Proceed([y]/n)?と聞かれるのでyを入力してエンターキーを押します。アップデート後に依存関係のチェックが自動で走り、完了には数分かかります。正常に実行できた場合、下記のようにdoneと表示されます。conda update --all
conda create -n 【新しい環境名】
と入力して仮想環境を作成します。下の例では、「py3」という環境名で、root環境を複製します。
先ほど同様にProceed([y]/n)?と聞かれるのでyを入力してエンターキーを押し、doneと表示されれば完了です。conda create -n py3 --clone base
(※Executing transaction: done が表示されてからもまだ内部で処理が続いているため、待機状態に戻るまで少し時間がかかります。)
補足
conda作成済みの環境一覧を確認したい場合は
conda info -e
と入力します。「*」の文字がついている環境名が現在選択されている環境です。
環境を切り替えるには、conda activate [環境名]
と入力します。
conda activate py3
この例だと下記画像のように、プロンプト先頭の文字列が(base)から(py3)に変わり、環境が切り替わったことが分かります。
もし環境を削除したい場合は、次のように入力します。
conda remove -n py3 --all
Jupyter Labのショートカット作成
PythonでのコーディングにはJupyter Labを用いると便利です。Jupyter Labは以下のコマンドで起動できます。
jupyter lab
インストール時にJupyter Notebookのショートカットリンクがスタートメニューに自動的に作成されますが、Jupyter Labは作成されないため、Lab版のショートカットを作成しておきます。
- 環境変数の設定
ショートカット作成時にリンク先のパスを設定する必要がありますが、仮想環境のフルパスを設定しようとすると長すぎて登録できないため、仮想環境のパスを環境変数に設定することで文字数を節約します。- Windowsタスクバーの検索窓にて「環境変数」と入力し、 「環境変数の編集」を選択します。(※似たような項目に、「システム環境変数の設定」がありますが、こちらはシステム全体に設定される環境変数の設定で、管理者権限が必要です。今回は管理者権限が不要な設定方法で説明します。)
- 「新規」を選択し、環境変数名と変数値を入力します。デフォルトのパスにインストールした場合の変数値は、
C:\Users\[ユーザー名]\Anaconda3
です。ユーザー環境変数にAnacondaが追加されたことを確認し、「OK」をクリックします。
- ショートカットリンクの作成
- Windowsタスクバーの検索窓で「Jupyter」と入力し、ヒットしたJupyter Notebook(Anaconda3)を右クリックし、「ファイルの場所を開く」を選択します。ここにあるJupyter Notebook(Anaconda3)をコピーして、デスクトップにペーストします。
- ペーストしたアイコンを右クリックして「プロパティ」を選択し、「ショートカット」タブにある「リンク先」の項目を以下のように修正します。
%Anaconda%\python.exe %Anaconda%\cwp.py %Anaconda%\envs\py3 %Anaconda%\envs\py3\python.exe %Anaconda%\envs\py3\Scripts\jupyter-lab-script.py "%USERPROFILE%/"
注) 末尾の"%USERPROFILE%/"
でJupyterLabのルートディレクトリを指定しているため、別ディレクトリを指定したい場合はここを変更します。
ファイル名を分かりやすいようにJupyter Labに変更し、アイコンをダブルクリックして、ブラウザが立ち上がりJupyter Labの起動を確認できれば完了です。
自動で立ち上がるブラウザを変更したい、などの設定変更が必要な場合は、configファイルを作成して設定する必要があります。(Jupyter Labの詳細な設定方法については別途記事を作成予定)