代数学の基本定理(Fundamental Theorem of Algebra)は、複素数体上の多項式方程式が必ず解を持つことを主張する定理である。
定理の主張
次数が n である複素係数多項式 f(z) について、f(z) の根が少なくとも1つ存在する。
証明
まず、f(z) が定数関数の場合、f(z) の唯一の根は z=0 であるから、命題は成立する。そこで、f(z) の次数が1以上であると仮定する。
f(z) の次数が1の場合、f(z)=az+b と書ける。この場合、a が0であれば、方程式 f(z)=0 の解は存在しない。a が0でなければ、z=−ab が f(z)=0 の唯一の解となる。
以下、f(z) の次数が2以上である場合を考える。f(z) の根が存在しないことを仮定する。そして、g(z) を次のように定義する。
g(z)=f(z)1
g(z) は複素数体上の解析関数であり、f(z) の根を持たないことより、g(z) は有界解析関数である。また、f(z) が n 次の多項式であることより、g(z) は n 次の多項式となる。
g(z) が定数関数である場合、g(z) の解が存在しないことより、f(z) は必ず解を持つことが分かる。そこで、g(z) が定数関数でない場合を考える。
g(z) の n 個の根を z1,z2,...,zn とする。このとき、g(z) は以下のように因数分解できる。
g(z)=f(z)1=c⋅∏i=1n(z−zi)
ここで、c は適当な定数である。g(z) が n 次の多項式であることより、n 個の根が存在する。しかし、f(z) が根を持たないことより、g(z) の根が存在することになる。つまり、g(z) の根が存在することに矛盾する。
以上より、f(z) は必ず解を持つことが証明された。