非ユークリッド幾何学とは、ユークリッド幾何学とは異なる公理系に基づく幾何学の一種である。ユークリッド幾何学は、平面幾何学・立体幾何学ともに、公理系が一意的に定まるとされる。一方、非ユークリッド幾何学は、公理系が複数存在することが知られている。
代表的な非ユークリッド幾何学には、リーマン幾何学・双曲幾何学がある。リーマン幾何学は、ユークリッド幾何学の公理系に、「平行公理」を追加したものである。平行公理とは、「同一平面上の直線Lと点Pに対し、Lを通らずPを通る一意的な直線が存在する」というものである。この公理が成り立つとき、ユークリッド幾何学が成立する。一方、平行公理が成り立たない場合は、リーマン幾何学では「極限直線」と呼ばれる、直線が曲面上をたどるような現象が生じる。
双曲幾何学は、平面上における直線・平行線の性質が異なる公理系である。具体的には、同一平面上の直線Lと点Pに対し、「Lを通らずPを通る2つ以上の直線が存在する」という公理を追加したものである。この公理が成り立つ場合、平面上には無数の平行線が存在することが知られている。双曲幾何学は、実際の曲面の形状に似た幾何学的対象を扱うことができるため、現代物理学においても重要な位置を占めている。
非ユークリッド幾何学は、ユークリッド幾何学とは異なる公理系に基づいているため、直感的な理解が難しいとされている。しかし、現代数学の基盤を築いた数学者たちによって、非ユークリッド幾何学が論理的に体系づけられ、幾何学の発展に大きな影響を与えたことは言うまでもない。